稲荷ずし 山叉山をつまみ上げ
寿司皿の とどめったない酒落が出る
熱い茶に馴れて山葵の利き加減
鮨屋から雪駄で出ると逃げるよう
水 府
雀 邨
打 柳
幽 香

どかどかと来て屋台鮨 眼が光り
屋台鮨 揚技を噛んで棄てたとこ
稲荷ずし 暗いところで飲んでいる
花嫁は小さい口で鮨をくい
半分の鳥居を見せる稲荷鮨
寿司皿へ 手の届かないお澗番
よし原の 話の中のしんこ鮨
がり巻にさせてお酒につかれてる
お土産の鮨を黙々 女房食い
本籍は東京生れ 寿司の味
母も子もあすへ寝られぬ いなり鮨
酒のあと しるこのあとへ 鮨の味
この駅で買う寿司がある一人旅
赤貝を握らせて 歯を自慢する
ゲソとヒモばかりの客でやかましい
金一郎
三太郎
路 郎
しげを
才 喜
苦笑子
一 昔
巨 郎
迷 亭
一 若
盈 光
星文洞
迷 亭

一 若
芳 浪

笹切りの腕のたしかな 錦皿
すしの皿 子供の群をしんとさせ
海苔巻に遠足の夢 つづくなり
折詰めのお鮨 煮ツメをほしくなり
ヒモなどを巻かせてシャボン箱の通
いなり鮨 あすの天気が気にかゝり
子心に 伯母の来る日のすし想う
てっか巻 シャツがきらいな男なり
けぬき鮨 うちへ帰ってお茶を入れ
ヅケの色 螢光燈をわびしがり
両国の鮨屋で 関取泣かされる
鮨の折 親孝行で通った娘
東京は とっても広い寿司の味
きゃっきゃっと 女笑ってすしが減り
おしたじをぞんざいにする子のお寿司
巨 郎
〇 丸
 〃
巨 郎
 〃
盈 光
太郎九
一 若
巨 郎
 〃
栄太郎
〇 丸
圭 柘
太郎丸
周 魚

懸崖も豊かにあって握り台
大皿の寿司 末の子から選らせ
お勘定 玉子のすしを喰べながら
奥様の友達が来た 茶巾すし
十人が十人 鮨に手が動き
蒸しずしの湯気に恋人 少しむせ
鮨の味 いよいよ菊の盛にて
鮨通に 調理士学ぶことをきき
お寿司屋で 叱られそうなビール飲む
粉わさの鮨で喜こぶ 郷里の父
出握りの板前 水に苦労する
茶巾すしのお客の静かなり
ほんとうは トロが喰べたい女の手
遠慮した マグロが皿でままこめき
どういれてみても 鮨屋の茶にならず
芝 水
圭 祐
一 若
巨 郎
星文洞
迷 亭
芝 水
芳 浪
巨 郎
仙之助
巨 郎
一 若
仙之助
一 若
圭 祐

てっか巻 お客の通りうけ答え
おさらいの楽屋がせまい 茶巾鮨
もう酒はおつもりにして 鮨の皿
立食に 小桶あるほど湯呑出る
満腹なものも鮨屋ならおつき合い
酔ってない怒っていない すしつまみ
この鮓が好きだった父おもう
弓とりに 一つこはだが乾いてる
鮨たべて 歌舞伎の話して別れ
もう酒はおつもりにして 鮨の皿
モーションをつけて 寿司屋は振ってる
洋菓子のように 大阪ずし並び
寿司屋では 本当に酔った人を見ず
もう一つ 殖えて出前を追っかける
巨 郎
 〃
星文洞
〇 九
芳 浪
太郎九
一 若
巨 郎
一 若
星文洞
裕 侍
万 柳
しげを
一 若

すし出前 すむと岡持肩にかけ
与平鮨 黒ちりめんの客が来る
笹巻を 舞台の顔のままでくい.
女客 鮨のくる問をよくしゃべり
遅くとも帰る お鮨の折をさげ
退院が近い お鮨の夢一つ
鮨皿へ貫って行く妓 手をのばし
鮨一つ醤油に崩れ 酔っている
シャリになる匂いがとゞく 握り台
金屏風 うしろですしを食べている
いま泣いた顔が機敷ですしをあけ
連れた子に すし屋の湯呑大きすぎ
すし屋ある日 模型のすしを拭き
御ひいきの顔より先にすしが来る
さばずしのさばが光っている 宵宮
幸 子
久良岐
 〃
 〃
芳 浪
仙之助
一 若
鈴 波
芳 浪
千代子
多賀子
純 和
ちどり
初 子
青 和

小鯛ずし旅客機で飛ぶ世になり
いい話 乗気の母がすしを巻き
鉛筆のようにまぐろがシンのすし
焼跡は早や立ち上る すしを巻き
すしつまむ劇評三宅周太郎
わさびぬきのにぎりを頼む 家族づれ
誕生日 すし巻く母が居てたのし
人ごみにもまれ 切腹してるすし
鉢巻の威勢 見る見るすLが出来
海苔巻に てるてる坊主はめられる
通でないお客を 鮨屋大切がり
鮓の店 愛橋の良さも味に入れ
高利貸 鮨をたべたべ涙出し
いなり鮨墓に供えて 春彼岸

この幕は出ない弥助がいまとゞき
珍 平
すすむ
モ カ
出句之坊
つとむ
久 子
とし子
茶 笑
雅 健
〇 九
仙之助
 〃
中 野
栄太郎

一 若
すし物語 宮尾しげを著   井上書房 昭和35年8月1日発行
歌舞伎の義経千本桜(歌舞伎18番狂言)の中に『鮓屋の段』がある。ここに出てくる鮓屋の弥助
『平維盛』が壇ノ浦の戦いで敗れた後、鮎を材料にする寿司屋に身を寄せ、ここの娘お里と恋仲になり、養子となり侍の身分を捨て鮓屋となる決心をし弥助と改名したのが11月1日。そのすし屋は今も現存し奈良県下市村の釣瓶鮨屋・弥助鮨。
昭和36年11月に全国すし商環衛連の第4回熊本大会において、毎年11月1日を 実りの秋・収穫の秋・米への感謝の日として全国すしの日とする事になった。